【まくのうちコミュニケーション@茅ヶ崎共恵】vol.5 創業130年の老舗の女性社長から始まる場合~岩澤あゆみさん(くまじ株式会社)の場合)
「私は、地位やその組織ゆえに、日常業務において、組織全体の活動や業績に対して、重要な影響をもつ意思決定を行う経営管理者や専門家などの知識労働者をエグゼクティブと名づけた」(「経営者の条件」)
茅ヶ崎市内で事業を行う社長や店長、店主や先生、リーダー、所長など名称は様々ですが
様々な業界の「茅ヶ崎のエグゼクティブ」を紹介していきます。
今週は、岩澤あゆみさん(くまじ株式会社 代表取締役)です
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岩澤あゆみさん。茅ヶ崎駅南口徒歩3分の「くまじ本店」をはじめ、茅ヶ崎ラスカ4階のKUMAJIやワコールガーテンを手掛ける、くまじ株式会社の代表取締役です。
くまじさんは、創業130年を越える茅ヶ崎の老舗。創業130年というと時代は明治時代が始まったばかり。これだけ古い会社が茅ヶ崎に存在することに、まず驚きます。くまじ本店にお邪魔しました。
くまじ本店では、呉服と国産ブランドの洋服、雑貨をメインに展開されています。現在の店舗は2016年に移転をされたそうです。
創業からの神棚を見せていただきました。木の色の濃さが、歴史と趣きを感じます。
反物が並びます。和服は着る機会が無いので、眺めるだけで新鮮に感じます。
この小あがりの上で着物を体に合わせて行くのでしょうか。
身につけるものが普段と異なると、その時間は普段の場所に居ても特別の時間になると感じます。
珍しいデザインの洋服も並びます。ラスカのお店はインポートのもの、本店は日本の物を取り扱っているとのことですが、色合いやデザインなど、くまじさんに並んでいる洋服はこだわり感が強いブランドが扱われており、個性的です。
「仕入はとくに面白いです。くまじでは、ストーリーと共に届ける相手がいるな、と思ったら仕入れるようにしています。流行っているとかモデルさんが着ているという理由ではなく、そのもののストーリー自体を語ることができるか。作っている人のこだわりや、想い、に共感できるか。誰かの手に渡ることをイメージできるか、誰かの手に渡るときに自分達が語ることができるストーリーがそのものにあるか、が大切な基準です。」
糸物業の老舗として~茅ヶ崎の洋服文化と共に~
創業130年のくまじさんは、茅ヶ崎の南湖で創業されたそうです。初代が岩澤熊次郎さんというお名前だった所以で、くまじという現在の名前になったのだそうです。
初代の熊次郎さんの時代は「糸物業(いとものぎょう)」と言って、糸に関するもの全般、呉服に限らず、お布団やタオル、お神輿のもじりなど、糸で作られる布製のものを作成するのがお仕事だったそうです。一方で、熊次郎さんは、南湖地域の今でいうと町長さんのような役割もされていたそうで、現在も南湖に残る井戸を掘ったり、お墓を建てたり、店の裏に寺子屋を作り、学校に行くことのできない子供たちが勉強をする場所を作ったりと、茅ヶ崎の発展のために力を尽くされたそうです。
くまじさんが現在の茅ヶ崎駅前に移転をしたのは3代目の時代。2代目が若くして亡くなった後、戦争から帰ってこられた3代目は、現在の くまじ のスタイルを作ります。糸物業として布製の商品を作製していたうちの、呉服部門だけを受け継ぎ、南湖から共恵に移転されたのだとか。時代は戦後、洋服の文化が広まる兆しを見せていた頃でした。「茅ヶ崎の人たちに、本物の文化を伝えることが、自分達の使命」くまじさんの中で受け継がれる想いを元に、三代目の奥様は、当時、日本で東京のみだった洋服の洋裁学校に通いました。その学校は海外のファッション誌が型紙と共に入ってくる日本唯一の場所で、デザイナーの森英恵さんも共に学んだ仲間だったそうです。これにより、呉服を扱う他に、型紙からおこして、スカートやブラウスなど、オーダーメイドの洋服を作製し、販売するようになりました。また、今では日本法人が販売を手掛けている外国ブランドの洋服が卸され店で販売されこともあり、茅ヶ崎の洋服文化は、くまじさんから始まったそうです。
同じ志のもとに~ワコールガーデンのオープン~
時代は、オーダーメイドの洋服から既製のものへと移り変わります。くまじさんでも、呉服・洋服と取扱いの分野が定まってきた頃、四代目の提案で、五代目となる岩澤あゆみさんが新たに手掛ける分野として、下着を取り扱うことになります。それまでも洋服コーナーの一角で下着を扱ってはいましたが、下着全般は初めて。「茅ヶ崎の人に本物の価値を伝える」を大切にするくまじさんの想いを形にするのは、本物の下着。下着で本物といえば海外のものということで、インポートランジェリーのお店を、茅ヶ崎ラスカの一角でオープンさせることになりました。インポートランジェリーの販売の経験がなかった岩澤さんを全面的にサポートしてくれた先輩女性経営者の後押しや、偶然の巡りあわせで最適な広さの売り場が見つかったご縁にも恵まれ、下着部門がスタートします。現在は2016年の茅ヶ崎ラスカリニューアルに合わせて、ワコールとフランチャイズ契約を結び、ワコールガーデンとして展開中。そのキッカケとなったのも、創業130年の伝統の中で受け継がれてきた想いが、ワコールの会社方針と合致したからだと岩澤さんは言います。
「本物を伝えるという使命を果たすために、インポートランジェリーは価格やその他の点で、ツールとしては万能ではありませんでした。手にする人が限られると感じていました。ワコールさんのお話しをいただいた時、伺ったのは、『ゆりかごからゆり椅子まで』という言葉です。私たちくまじも、お客様が生まれてから亡くなるまで、『お客様の人生に寄り添える覚悟がなかったら辞めなさい』と言われてきました。同じ志だと共感したので、ワコールさんとフランチャイズ契約を結びました。フランチャイズなので売り場のスタイルなど色々と決まりや縛りがあったのですが、私たちくまじが長年続けてきたお客様との関係を作るための売り場のスタイルは、今ではワコールさんが他の店舗で採用されるようになりました。」
創業130年を経て脈々と受け継がれる「茅ヶ崎の人に本物を伝える」「茅ヶ崎の人の人生に寄り添う」という想い。確立された精神性の高さを基軸に、今週は、くまじの岩澤あゆみさんにお話しを伺っていきます。