【まくのうちコミュニケーション@茅ヶ崎萩園】エグゼクティブな姿~川端立珠さん(ぴあのきょうしつ)の場合~
マネジャーには二つの役割がある。第一の役割は、部分の和よりも大きな全体、すなわち投入した資源の総和よりも大きなものを生み出す生産体として創造することである。(マネジメント)
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おさらい会の秘密
川端さんの教室の特徴は、中学生以上の生徒さんの割合が多いことと、大人の生徒さんが多いこと。
その理由は、川端さんのレッスンの進め方にあるようです。
ピアノ教室では、年に1回、ホールを利用しての発表会とは別に、お教室での「おさらい会」が開催されます。その日は、生徒さんだけでなく保護者の方も集まり、順番にピアノを弾きながら、お菓子やお茶を囲み懇親を深めるそうです。
「自分が社会人を退職して通った音大では、一日中、ピアノの練習をしていました。周りには自分と同じようにピアノを一日中練習している仲間が居ました。ピアノは個人の種目なので、練習は一人です。ですが、音楽が好きな仲間と一緒に、練習の合間に音楽について会話を交わし、励まし合う時間を共有できたことが、自分にとってはとても大切な時間でした。」
教室での練習も個人レッスンですが、同じように、ピアノに向き合っている仲間同士。
「孤立させない」
「仲間を作る環境を」
「励まし合ったり互いに刺激し合える環境をつくってあげたい」
自身が先生を目指す時に知った仲間の存在の大切さ
個人種目になりがちなピアノのレッスンの中で、自分が味わった大切なものを、自分の教室の生徒さんにも感じさせてあげたい。
川端先生の丁寧な想いが、そこにはあります。
おさらい会では、他の子の演奏した曲に刺激を受けて「自分も、あの曲を弾けるようになりたい」と思えたり
学校の合唱祭での伴奏を控える仲間にエールを送ったり
中には、人生で初めての「本気の緊張」を経験する機会になる生徒さんもいるのだとか
皆で集まり、互いに互いの演奏に耳を傾ける場所をつくることで、生徒さんそれぞれの成長や経験のきっかけを川端さんんは創っているのだと思います。
単純な「皆が集まり、それぞれが自分の発表をする」ことにとどまらず、互いに影響し合い刺激し合うからこそ生まれる成長があります。
「アンサンブル」がチームを作る
また、教室の年1回の発表会で大切にしているものが「アンサンブル」
「アンサンブルは、フランス語で『一緒に』という意味なんです。二人以上で一つの楽曲を創り上げます」
1台のピアノの連弾から始まり、ピアノに合わせての合唱や、生徒数名でのハンドベル演奏を行ったこともあるそうです。
「一緒に演奏することで、上手な子に引き上げられるように、素晴らしい演奏になりますし、失敗してしまった時などは、他の子がフォローに回ったり。一緒に演奏していると空気感で分かり合い、互いにフォローし、高め合うことができます。それがアンサンブルの魅力です。」
おさらい会では、互いの演奏を楽しみ、高め合う仲間として
発表会では、一緒に一つの楽曲を創り上げる仲間として
場に合わせて形は変化しますが、個人の取り組みになりがちなピアノを、川端さんは見事に「チーム」という形に創り上げていると感じました。
チームの仲間がいるという状態は、教室に通う生徒さんにとっても、一人でピアノを練習するのでは得られない楽しさや喜びがあると感じます。それが、小学校の卒業後もピアノを続ける生徒さんの割合が多いことにも繋がっていると思います。楽しいから続ける、のです。
一人ひとりにあった音楽との向き合い方を提案する
また、練習する楽曲や発表会の楽曲の決定も、生徒さん一人ひとりに丁寧に向き合うことを大切にされているからこその特色があると感じました。
「この子は、こういう性格だから、こういう曲が向いているだろうなと考えて提案したり。腕の柔らかさや音の太さといった技術やクセに合わせて提案したり。楽しんで演奏してもらいたいと思うので、その辺りは考えて提案しています。」
自分が生徒だったら、自分に寄り添って、一緒に練習してくれるような向き合い方の、川端先生の存在は、とても大きいだろうと感じます。
川端さんは、チームの一人ひとりの動機づけを行い、丁寧にコミュニケーションをはかり、目標に向かって一緒に切磋琢磨してくれる、時には冷静にフィードバックもしてくれる、まるでマネジャーのような存在であると感じました。
「教師と生徒」というよりも、自分の目標を一緒に目指してくれる伴走者のような、仲間のような。その魅力から、生徒さんが大きくなっても、教室に通い続けたいと思うのだと感じます。
「ピアノを弾いてみたい」という想いに、丁寧に一緒に寄り添いながら、共に歩む川端さんの姿からは、本当に多くのことを気づかされるのです。