【まくのうちコミュニケーション@茅ヶ崎の物づくりの現場から】vol.8宮崎哲郎さん(株式会社宮崎印刷所)
「私は、地位やその組織ゆえに、日常業務において、組織全体の活動や業績に対して、重要な影響をもつ意思決定を行う経営管理者や専門家などの知識労働者をエグゼクティブと名づけた」(「経営者の条件」)
茅ヶ崎市内で事業を行う社長や店長、店主や先生、リーダー、所長など名称は様々ですが
様々な業界の「茅ヶ崎のエグゼクティブ」を紹介していきます。
今週は、宮崎哲郎(みやざきてつろう)さん(株式会社宮崎印刷所)です
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宮崎哲郎さん。株式会社宮崎印刷所の取締役、営業部長です。
宮崎印刷所さんは2019年に創業70年を迎えた茅ヶ崎で最も古い印刷会社です。
現在茅ヶ崎市内で印刷業を営まれている方の多くは宮崎印刷所さんで修行をして独立されたそうです。
今回初めて、生の現場を訪問させていただきました。
宮崎印刷所さんは茅ヶ崎市円蔵の茅ヶ崎機械金属工業団地内にあります。建物は築30年以上とのことですが、通された玄関が、まず、とってもキレイで空気が澄んでいて驚きました。話を聞くと、社長を筆頭に社員皆で朝6時30分頃から、毎日掃除をしているそうです。
「心の乱れが仕事の乱れです。うちの社長は『東大に行く人と行けない人の違いは、整理整頓をできるかできないか、だけだ』とよく言っています。印刷会社は紙を裁断するために紙粉がたくさん出るので埃があったり、一般的にはあまりキレイではないかもしれません。ですが、うちでは、毎朝皆で掃除をしています。私も雑巾がけをしています。会社を訪れるお客様は皆さん、工場の汚れが無いことに驚かれます。」
茅ヶ崎でここだけ~一括制作が可能な現場~
宮崎印刷所さんは茅ヶ崎市内で最も古いだけでなく、制作→印刷→製本の全ての行程を自社一括で行うことができる唯一の工場だとか。ワンストップで対応できるのは、それだけの精度の良い設備と、それらを扱うことのできる熟練した腕を持つ職人さんがいるからです。
工場内を見学させてもらいました。
印刷の工程ー①制作
①まずは制作室
印刷物は完成データを持ち込まれる場合もありますが、もちろん、社内で一から制作することができます。
「色は4色でできています、ルーペで拡大してみると、CMKYの点々で色が出来ていることがわかるんですよ」と宮崎さん。
Cはシアン、Mはマゼンタ、Kはブラック、Yはイエロー、インクジェットプリンター4色の色です。
印刷物を拡大してみました。
写真では残念ながらそこまで移せませんでしたが、肉眼で確認すると、本当に4色の点々で構成されていました!このように見たことは初めてでした!
制作室では、印刷データを制作し、その中で色が決まります。4色の配合割合(シアンは何パーセント、マゼンタは何パーセント、というような)が決まります。明るさ調整や赤みの調整ができるそうです。また、配合割合も熟練の技だとか。
制作の方にお話しを伺いました
「営業がお客様から、制作物について話しを聴いてきます。そのイメージをカタチにするのが私たちの仕事です。お客様の言葉をヒントに、どのような意図でその言葉を発しているのか、イメージします。簡単ではありませんが、お客様から期待以上のものを作ってもらったと御礼を言われることは、制作冥利につきます。」
令和元年度の茅ヶ崎市観光誘客ポスターは宮崎印刷所さんの制作です。
②制作室の隣りには校正室があります。校正室はとても静かでした。データの校正は寸法や位置など細かい部分にまで及びます。作業場所が隣り合っているので、制作と校正の担当の方のやりとりもスムーズです。修正する部分などあれば、その場ですぐに確認ができます。
印刷の工程ー②印刷
続いて、一階に広がる工場に案内してもらいました。二階の制作室・校正室で作成したデータは、一階の工場でお客様に納品される状態に完成します。
宮崎印刷所さんの印刷はオフセット印刷というもの。
①まず、データを板に転写します。製版という工程です。いきなり紙に印刷していくのではありません。
転写した板の束は、何度も印刷するような物はこのようにして保管してあります。
伝票や帳票など、お客様が社内での事務処理用に使うものが多いそうです。
制作したデータを板に印刷していきます。
②続いて、印刷です
オフセット印刷の機械はとても大きなもの。
この4つ並んでいるのが一連の機械です。4つの中には、色の4色、シアン・マゼンタ・ブラック・イエローのインクがそれぞれに割り当てられています。
全てのカラー印刷はこの4色でできています。印刷物はそれぞれの色が「〇%」という割合に決定され、この機械を通るごとに、シアンが〇%、マゼンタが〇%、というように印刷されて、最終的なカラーの印刷物が完成します。
二色刷り用のオフセット印刷用の機械も別にあります。
二色刷りと四色刷り。世の中のものは、二色刷りとその他のカラー印刷とで、お値段が異なるものがありますね。年賀状やチラシなどです。それはこのように、機械の違いや工程の違いがあるからだそうです。
二色刷りの機械を掃除している職人さん。インクのローラーを掃除されていました。丁寧に日々、印刷を受け持たれている様子が、その手つきや私との応対で感じられました。
宮崎印刷所さんの職人さんはとても感じが良いです。
オフセット印刷はデータを転写した板を機械にセットし、転写されたデータを今度は紙に印刷していきます。
二色刷りの物は機械を二回、四色刷りの物は機械を四回、用紙が通って行きます。
印刷物はこのようにして作成されていくのです。
印刷の工程ー③製本
続いて、印刷された用紙を綴じる機械、帳外機です。製本を行う機械です。
宮崎印刷所さんでは、お客様の手元に納品される状態を、この工場の中で全て完成させることができます。冊子になっている印刷物は綴じるという作業が必要です。
私たちが一般的に出来るのは紙を外から束ねて綴じる方法。外にホチキスの芯などが出る綴じ方です。
一方で、印刷物の内側、中央の折り目の部分にホチキスが来るものがあります。「中綴じ」と呼ばれるものです。この中綴じは機械でなければできません。
印刷物を中綴じする場合、先ずは1セットだけ試しにセットして完成品に間違いがないか確認します。
機械を通せばあっという間に折られて完成します。
一面に印刷された幾つもの同じデータを分割する機械もあります。断裁機です。
例えば商品の注文を書き込む伝票などがこれにあたります。一枚の用紙に幾つも同じデータを印刷し、一度に何枚も断裁するのです。断裁する寸法の目印を「トンボ」というそうです。
ちょうどこの日は新人職人さんが修行中でした。
宮崎印刷所さんは各所の行程で熟練の職人さんに支えられています。皆さんとても明るくにこやかで、まるで接客業の現場のようだったのが印象的でした。朝から現場を掃除しているからでしょうか。
お客様の顔を思い浮かべて仕事をしてほしい
宮崎さんは言います。
「うちは職人に支えられています。自分は営業を担当していますので、お客様とのやりとりをするのは自分です。ですが、自分がお客様から伺って来た要望を形にするのは、デザイン制作から、印刷、製本、断裁と、すべてうちの職人です。ですので、職人たちには、上司の顔ではなくお客様の顔を思い浮かべて仕事してください、と言っています。また、お客様からの言葉は全て、現場の職人に伝えるようにしています。」
今週は茅ヶ崎で唯一、印刷工程の全てを扱うことができる、茅ヶ崎で最も古い印刷会社、宮崎印刷所さんの宮崎哲郎さんを通じて、茅ヶ崎のものづくりの現場をお届けします。
どうぞご期待ください。